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【第3回】ブロックチェーンが創出する情報ビジネスのパラダイムシフト

IT・Webコラム

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ブロックチェーンの出現により、さまざまな情報を扱う企業におけるビジネスモデルが大きく変わろうとしています。端的に言えば、集中管理型の情報システムから分散型情報システムへのパラダイムシフトです。

各種証明書発行ビジネスから、食品トレーサビリティ、ウェブ投票システムなど、ブロックチェーンの活用の幅がどんどん広がっています。

集中管理型=利権の集約という弊害

特に日本においては公的機関の信用力は絶大であり、「お役所のお墨付き」があれば多くのビジネスにおいて高い信用を得ることとなります。裏を返せば社会的な信用力が求められるや証明書や書類の発行は、主に公的機関が担ってきた役割であり、そこに利権も集中しているのです。

しかし、ブロックチェーンの登場により、分散型データベースを構築し公的機関に頼らなくてもさまざまな証明業務が可能となります。

食品トレーサビリティにおける活用事例

ひとつ具体例でお話ししましょう。

現在、日本において有機野菜(オーガニック栽培)の表記をするには、農業生産者がオーガニック認証団体に加盟しなくてはなりません。日本では、それを農林水産省が管理する「有機JAS」がおこなっており、農作物の出荷時にその認定を受けることではじめて、「有機野菜」や「有機食品」というように「有機○○」の表記をして販売することができるのです。

しかし、この有機JASの認定を受けるためには申請手数料や審査料、検査料など多くのコストがかかり、小規模農業従事者であったとしても年間10万円以上の出費を余儀なくされます。また、毎年継続して認定を受けるためには更新費用(年次監査料)も生じ、その負担は小さくありません。以下、その費用を整理してみました。

【有機JAS認定手数料(個人生産者の場合)】
(初年度)
・申請手数料…………20,000円
・審査手数料…………30,000円
・実地検査手数料……50,000円
・実地検査経費………実費

(年次監査)
・監査手数料…………20,000円
・実地監査手数料……50,000円
・実地監査費…………実費

(変更申請)
・審査手数料…………25,000円
・実地検査手数料……50,000円
・実地監査費…………実費
────────────────
※出典:農林水産省ホームページ

コストを上乗せし割高になる有機食品

これらのコストは農業従事者にとって、気楽に払えるものではないですよね。つまりこれらのコスト負担を商品価格に転嫁せねばならないという状況であり、結果的に消費者が割高な有機食品を購入しているという現状があります。

しかし、丹精込めて生産した食品の魅力が割高な価格により減少してしまうのは農業従事者にとって本望ではありません。そこで生産者と消費者がお互いの信頼関係に基づき直接やり取りするケースが増加してきました。

ただし、無認可であるため安全性や品質の高さを証明することが難しいという課題が残ります。

ブロックチェーンにより有機野菜の信頼を担保する

こういった問題をブロックチェーンにより解決する企業がイギリスで誕生しています。「Provenance」という会社は、農家が出荷する商品に原産地や生産者の詳しい情報をデジタルで登録するシステムを開発しました。

商品パッケージにスマートフォンでのアプリで認識できるシールまたはタグを添付し、消費者がその商品の安全性をシステム上で確認できるようにしたのです。

システム利用料も非常に安価であり、例えば事業者の負担は月額7ポンド(約930円)のスターターコースと月額29ポンド(約3,800円)のプロコースがあり、どちらかを選択することができます。プロコースではより詳細な生産者情報を登録することが可能となり、信用度が大きくアップします。

www.provenance.org

このシステム自体は有機野菜の安全性を担保するものではありません。しかし、添付されたシールまたはタグを通して生産者の詳細な情報を知ることができれば、公的機関や団体の「お墨付き」が無くとも消費者との信頼関係を築くことができるため、今後の展開が注目されています。

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拡大するブロックチェーン市場

このように、ブロックチェーンによるシステム構築はこれまでの情報処理業界に大きなパラダイムシフトを生み出しています。他にも、以下のような分野におけるブロックチェーンテクノロジーの活用が検討もしくは試行されており、海外においては多くのベンチャー企業が誕生しているのです。

【ブロックチェーンテクノロジーの活用例】 ・国際間、個人間の送金サービス ・個人間の少額決済サービス ・従来の金融機関が扱わない資産の管理 ・不動産賃貸契約 ・未公開企業の株式取引 ・アーティストの著作権管理 ・コレクターアイテムの所有権登記 ・ブランド品、美術品の本物認証 ・農業や製造業のトレーサビリティ ・医療情報の管理 ・ビジネス契約書の管理 ・不動産の登記 ・戸籍や納税などの個人認証情報

電子化の進まない重要書類をブロックチェーンで保管

上記の分野に共通しているのは、契約や証明などがすべて「紙」により行われており、電子化が進んでいないという点にあります。意外なことに、先端IT企業においてもビジネスの商談では互いにNDAや業務委託契約書などを書面で作成し、両者で押印した後に1通づつ保管するというアナログ的な慣行が残っています。

しかし、紙の契約書は紛失や消失のリスクがあるため、これを法的にも効力がある電子契約書に進化させるというビジネスはブロックチェーンにより実現可能です。また友人間の金銭の貸し借りなども、スマートフォンから手軽に借用契約を交わせるような仕組みがあればトラブルを防ぐことにもなるでしょう。

ブロックチェーンによる遺言サービスの実現

もうひとつ有望な市場として、電子遺言サービスが挙げられます。これは、生前に複数の関係者が署名し作成する、電子遺言として文書です。死亡後には法定相続人のすべてが承認しなければファイルを開けないようにすることで、第三者や一部の相続人による改ざん及び遺言の秘匿性を担保できます。

現状、電子遺言に法的効力はありません。これは、「電子データが改ざんされやすい」という理由に基づくものです。ブロックチェーンテクノロジーにより改ざんされる可能性がゼロになれば、将来的には正式な遺言状として通用することとなるでしょう。

まとめ

ブロックチェーンの歴史はまだ浅く、システムを構築できるエンジニアもまだまだ少数です。一方で、世界経済フォーラム年次総会(通称ダボス会議)において「2016年の10大新興技術」のひとつとして取り上げられたこともあり、スキルを持ったエンジニアは引っ張りだこであり、その年俸も破格といえます。

ビジネスとしてもまだ安定しているとは言い難く、しっかりと収益を稼ぎ出しているのはごくわずかであると考える向きもありますが、ブロックチェーンが今後の経済や金融に与える影響を無視するのは得策ではないでしょう。

なぜなら、ブロックチェーンは多くの政府機関や大手企業が着目しており、新たな信用社会の創出に向けて、新たな取り組みが次々と生まれ出ている市場だからです。

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